ヒケ。合わせ目やパテを盛った部分などが時間の経過と供に凹んでいく現象。溶剤関連の影響でもっとも目にするのがこれでしょう。
プラパテ、塗料、接着剤等、溶剤の揮発により硬化する一液性の素材では避けられない影響です。
パテ類は多目に盛る、プラスチック用接着剤の乾燥時間は長めにとる、といったところが対処方法です。あまりに常識的なので書くことが気がひけますが。
溶剤による希釈度が高いほど、その分、乾燥に伴って体積が減少するので、収縮率は大きくなります。
エポパテやポリパテなど化学変化で硬化する二液性の素材では、硬化の過程で収縮しない(筈な)のでずが、ポリパテは(流動性を良くするなどのために)溶剤成分を含んでおり、これが揮発することにより若干収縮します。
溶剤成分の揮発による体積減少の影響がより大きくなると、変形やひび割れが発生します。
複数の収縮率の違う素材を組合せて使うことにより、より発生しやすくなります。
例えばプラ板とポリパテを組合せて使用してパーツを新造した場合、(銘柄によりますが)ポリパテの方が縮むのでパーツがポリパテ側にひしゃげたり、ポリパテがひび割れたりする場合があります。
他に、塗装の際、トップコートにクリアを厚く吹くと下地塗装とクリアの収縮率が違うために塗膜がひび割れたりする場合など、素材の収縮は模型作業におけるトラブルの原因の一つです。
メーカー名、商品名は伏せますが、ある模型の初期ロットにおいて採用されたゴムパーツがスチロール樹脂を溶かしてしまうということがありました。
これはそのゴムパーツを成型する際、流動性を高めるために使用された溶剤の所為なのですが、問題が発覚してからのロットではそのようなことはおこらなくなりました。
メーカー側も試作の段階で色々と試験はしていると思うのですが、新素材の適用による長期的な影響に関してはチェックが甘くなりがちなようです。
ソフトビニールやレジンキャストでできたガレージキットにたまに見られるのですが、完成後、時間とともに、つや消しに塗装した箇所が徐々に光沢を帯びてくる場合があります。
これは素材に含まれる溶剤成分が時間とともに徐々に塗膜を侵してしまうために発生するようです。
塗料を塗装する際はリターダーなどを添加して乾燥時間を引き伸ばした方が光沢がでやすいのとほぼ同原理と思われます。
肉抜き穴を埋める際などは、硬化時の収縮率が大きいプラパテなどは使用せず、プラ板で蓋をしたりエポパテで埋めたりと目的にあわせて素材を使い分けることです。
様々な模型材が発売されている現在、プラパテは表面処理やちょっとした傷の修正にしか用いないのが正解でしょう。
もっとも手軽で確実な方法。
素材に含まれる溶剤成分が抜けきるまで乾燥時間をとるというわけです。
欠点は時間がかかること。素材によっては数年以上かかる場合もあります。
(適切な例ではないですが、油絵の具は溶剤の揮発、酸化を含め、完全に硬化するまで数十年、数百年かかるともいわれています。)
利点は、買ったままいつまでも完成しないガレージキットのことを聞かれた際、「乾燥しきるまで寝かせてあるんだ」と言い訳できることでしょうか。