デカールを貼るにあたって、ありがちなトラブルへの対応について。
デカールを貼る箇所が二次曲面など複雑な形状の場合、基本的に平面で伸縮性の低いデカールはその表面に馴染みません。
この状態はデカール軟化剤を塗りデカールに伸縮性を持たせることである程度緩和できます。
一般的に入手できるデカール軟化剤を画像で紹介します。
左がクレオスのマークソフター、右がモデラーズのデカールフィット。私はデカールフィットの方をよく使います。
使用法は「軟化剤をデカールの裏側に塗ってから貼る」となっていますが、そんなことをすると大抵「位置決めする前にデカールが軟化してしまい修正もままならない」状態になってしまうことが多いです。
簡単に使用するなら「しっかりデカールの位置を決め、水を拭き取って乾燥させてからデカールの上に塗る」ことをお勧めします。
より確実に模型の表面に馴染ませたい場合は「しっかりデカールの位置を決め、水を拭き取ってから面相筆に含ませた軟化剤をデカールの下に流し込む」という方法があります。
流し込んだ後、即座に蒸しタオルや綿棒などで圧着すれば、かなり複雑な形状に対応できるだけでなく、ある程度シルバリング(後述)を防ぐこともできます。圧着作業は表面まで軟化しきる前に手早く終わらせること。
軟化剤を使用する上で注意しなければならないことは「伸びた後に縮む」ことです。それゆえ、通常の状態である面積に丁度良かったサイズのデカールが、軟化剤を塗って乾燥させるとサイズが足りなくなるなどという現象が発生します。
こうなると塗らない方がましということもありますので、使用する際は注意しましょう。
この縮みは後述する木工用ボンドで貼りつける方法を用いればある程度回避できます。
デカール軟化剤だけでは模型の表面にデカールを密着させることができないかデカール軟化剤でデカールが軟化できない場合、何かの都合でデカール軟化剤を使用できない場合、蒸しタオルを用いて熱でデカールを軟化させて圧着するという方法を用いることで解決できることがあります。
方法は簡単。デカールをしっかり位置決めして水を拭き取った後、その上に蒸しタオルを押しつけるだけです。
蒸しタオルは絞ったタオルを電子レンジで温めればすぐに準備できます。
模型の形状によっては軟化剤を使用しようと蒸しタオルを使用しようと伸縮性が足りずに馴染ませるのが無理ということがあります。
そういう場合ですが、デカールに切れ込みを入れるなどして形状に馴染ませ、重なった部分は切り取り、足りない部分は似た色を塗装することで目立たないようにするというように処理するくらいしかありません。
これはシルバリングと呼ばれる現象で、模型の表面が艶消しや梨地になっているためにデカールが模型表面に密着しないために発生する現象です。
対応方法としては以下が挙げられます。
1.デカールを貼る前に丁寧に余白を切り取っておく。
2.デカールを貼る際にデカール軟化剤や蒸しタオルを用いてきちんと密着させる。
3.模型の表面を予めクリアコートするなどして細かい凹凸を無くしてから貼る。
2の方法では必ずしも密着しきれるとは限らないので、最初からそういう状況にならないように1と3を併用するのが良いと思います。
デカールを水に浸けすぎた場合やデカールを貼り直す際、デカールの糊が水に溶けきって模型の表面に貼りつかないことがあります。
そういう場合、水に溶いた木工用ボンド(水性で乾くと透明になるもの)をデカールの裏に塗って貼ることで解決できます。
私は使用したことがありませんが、クレオスのマークセッターなどの粘着剤を使って貼りつけるのもいいかもしれません。
この木工用ボンドで貼りつける方法ですが、若干ながらシルバリングを防ぐ効果がありますし、デカール自体を補強する効果もあります。「大面積のデカールをクリアコートしたらデカールが割れてしまった」ということが発生した場合、貼り直す際に糊を完全に洗い落として木工用ボンドで貼りつけることで割れるのを防ぐことができる可能性があります。
古くなって劣化してしまったデカールでよくおこる現象です。
どうやら乾燥による収縮によりデカールにヒビが入ることによって発生するようです。
私もしばしば体験します。
粉々になったデカールを「ちょっとしたパズルだね」などと言いながら模型の表面で位置合わせしてつなげていくのはかなり泣ける上に時間の無駄もはなはだしいので、水に浸ける前に修復するか作り直すかした方がいいでしょう。(はっきりいって割れてしまうとリカバリーは困難)
デカールの修復剤としてはマイクロスケールのリキッドデカールフィルム(かつてのスーパーフィルム)があります。
これをデカールの上に塗布しデカールの上に新たに皮膜を作ることによりデカールを修復できます。(擦れや溶剤に弱い自作デカールを保護する際にも使えます。)
現代はデカールを自作できる環境が容易に手に入るようになりましたので「スキャナで取り込んだデカールのイメージを編集して印刷することでデカールを作り直す」ということもできるようになりました。
この方法の問題は、印刷の色はシアン、マゼンダ、イエローの組み合わせで表現されるので、現状、赤などの色の再現性に問題があることです。(組み合わせによる色表現では鮮やかな原色を表現するのは難しいので、アルプス電気からせめて赤のインクカセットが発売されないものかと思います。)
コスト的にはデカールフィルムを塗る方が安いですし、時間的にも手っ取り早いですが、デカール印刷には何度でも作り直せるというメリットがあります。
現代は劣化したデカールに対してもそれなりに対応方法があるわけですが、一番良い方法は「買ったプラモデルはデカールが劣化する前に作れ」ということでしょうか。自戒。