グラデーション塗装を行う意味は身の回りのものを観れば判ります。
例えばボールのような球体。光のあたる方向から陰になる方向へ明度差に従って「視認する色」は変わります。
あるいは花。中心側が白で外側が赤い花であれば、中心側から外側へ向かって色素の分布に従って色は変わっています。
グラデーション塗装とは、そういう「明から暗」や花びらのような自然な色のつながりを塗装で再現する方法なのです。
明度差を表現するためのグラデーション塗装は、スケールの違いによる光の当たり方の違いを塗装で再現する手段であるわけですから、ゆえに実物大の模型であれば、理論的には行う必要がないということになります。
明度差による色の変化を表現するグラデーション塗装にはいくつかの方法があります。
まず模型全体を暗い色で塗装し、陰になる箇所を残しながら徐々に明るい色を重ねていく方法。
この方法の良い点は、暗から明への色の変化を自然に表現することができることです。
欠点は隠蔽力の低い塗料を使用する際は、塗膜が厚くなりがちなこと。
これは、古くからミリタリーモデラーの作品に見ることができる方法です。(つや消し黒を基準にマホガニー、ダークイエローというようにエアブラシで吹き重ねた戦車の模型などを見たことはありませんか?)
近年では「陰を残す」というより、「エッジやパネルラインを残す」ことにより「面の膨張感を演出する」(明るい色は暗い色よりとびだして見えるため)一種の「模型表現」と化した感があります。
キャラクターモデルでは一般的ではありませんでしたが、MAX渡辺氏により「黒立ち上げのMAX塗り」として広く知られるようになりました。(氏の手によりキャラクターモデル塗装技術として昇華されていますが)
クリアカラー等、隠蔽力の低い塗料の場合、暗い色の上に塗っても発色を期待できないので、一旦、下地に黒から白へのグラデーションを塗装した上で隠蔽力の低い塗料を重ね塗りします。この方法は「白立ち上げのMAX塗り」と呼ばれ、隠蔽力の低い塗料でも鮮やかな発色と塗膜の薄さを両立できます。
まず模型全体を明るい色で塗り、陰になる箇所に暗い色を重ねていく方法。
この方法の良い点は陰を残していく方法に比べ、塗膜を薄くできることです。
欠点は明から暗への自然な色の変化を表現し難いこと。凹部に塗装することは凹部の色を残すことに比べて難しいからです。
この方法は一般に「シャドー」と呼ばれています。
目的の色を最初に塗り、陰にはシャドー、明部にはハイライトというように調整していく方法。
この方法の良い点は完成を予想しながらの塗装が行いやすいことです。
欠点は上記の二つの方法に比べて「薄っぺらい表現」になりやすいこと。
塗料を霧吹きの原理で吹きつけるエアブラシはグラデーション塗装が簡単にできる方法です。
吹き残しもシャドーも別項でふれているので、ここでは省略します。
油絵などで使用されている技法です。塗装面で色を混ぜ合わせることによりグラデーションをかけます。
塗装面の上で直接混ぜ合わせる方法と、乾燥後に色の境界をシンナーを含ませた筆でなぞって混ぜ合わせる方法があります。
前者は乾燥の遅い塗料向き(油絵の具、エナメル系塗料、アクリル系塗料)、後者は乾燥の早い塗料向き(ラッカー系塗料)です。
ドライブラシは、筆に含ませた塗料をわざと拭い、筆に残った僅かな生乾きの塗料を模型の表面に少しずつこびりつかせていくことでグラデーションをかける技法です。
絵を描く人には「ぼかし筆」といった方がわかりやすいかもしれません。
ドライブラシでかすらせながら色をのせていくことによりグラデーションをかけるというわけです。
模型の凹凸を強調するのに適した方法です。