まずパーツを黒で塗装します。
黒は光を反射したり透過したりしないために黒く見えるわけで、これにより黒い塗膜より下からの光学的な影響を無視できるようになります。
つまり透けないということです。
またこれにより実際に目に入る光は黒より上の塗膜からの反射となるので、光学的に塗膜を薄く見せることができます。よってグラデーションを目的としない場合でも下地を黒や濃いグレーで塗装する場合があります。硬質感や重量感が増して見えるからです。
こういう塗装に使用する色は黒に限りませんが、その目的上、隠蔽力が高くて暗い色を使用します。
目的の色がダークイエローの場合は下地にマホガニーを使うというように。
エアブラシを用いて目的の色(この場合グレーFS36622)をエッジやパネルライン、陰になる箇所を吹き残しながら塗装します。
エッジやパネルラインを吹き残すのは、リアルさのためではなく、塗装面の情報量の増加による視覚的インパクトを狙ったものです。
グラデーションのきつさは吹き残し方によって決まります。
この方法は暗から明へかなりきついグラデーションをかけることも可能です。
普通、鮮やかに発色させるためには下地が白であることが望ましいのですが、こういう明るいグレーに限らずミリタリーモデル向けの塗料は非常に隠蔽力が高いものが多いので、下地の色にあまり左右されずに発色します。
画像は赤(モンザレッド)で塗装する予定のパーツです。
既に隠蔽力の高い明るいグレー(グレーFS36622)で暗から明へのグラデーション塗装が施されています。
これは隠蔽力の低い塗料を黒の上に発色するまで塗ることで塗膜を厚くすることを避けるためです。
赤、青、黄といった原色系の色は隠蔽力がかなり低いことが多いです。
そのため、塗膜を薄くすると下地の色の影響をそのままうけますし、黒の上に直接塗ってもなかなか発色しません。
こういう隠蔽力の低い色で黒から立ち上げるグラデーションを行う場合、薄い塗膜で仕上げるためには下地に暗から明へのグラデーションを施しておくことが必要です。
パーツの上に赤(モンザレッド)を塗装した状態です。
下地の濃淡がそのまま反映されていることがわかるでしょうか。
このように下地に暗から明のグラデーションを施しておくことで、暗から明へのグラデーション、鮮やかな発色、塗膜の薄さといった要素を両立させることができます。