ドライブラシ

 ドライブラシとは通常、筆に濃い塗料を含ませてから拭い、筆に生乾きの塗料を残し、その筆で塗料を擦りつけるように塗る技法のことです。
 元々は、油絵や水彩画で濃い塗料を擦り付けることによる強い発色と擦り付けた際の筆目を利用した表現に用いられる技法です。
 特徴としては擦りつける際に凸部を中心に色が付きやすく、少しずつ塗装面に乗せた色を引き伸ばしてぼかしながら塗ることも可能です。
 模型においてはその性質を利用して、かすれ塗装もしくはぼかし塗装に利用されます。

かすれ塗装としてのドライブラシ

 一般に模型でドライブラシというと、かすれ塗装としてのドライブラシを指します。
 凸部を中心に色が付きやすいという特徴から、明るい色をエッジなどに乗せることによるハイライト表現とそれによるディテール強調の他、金属色を用いてのチッピング表現や磨耗表現、茶系の色を用いての泥の付着表現などに利用されたりします。

ドライブラシの準備  ドライブラシには乾燥が遅く伸びが良い塗料が向いています。
 そういう条件を満たさない塗料でも可能ですが、乾燥が早い塗料だとすぐに筆が乾ききってしまいますし、伸びが悪い塗料だと塗装面に付着させるのが難しくなります。
 その特徴上、エナメル塗料や油絵の具に向いた技法といえるでしょう。
 画像はエナメル塗料のニュートラルグレイを含ませた使い古しの平筆をドライブラシのために布切れで拭っている様子。
 ドライブラシによる色の乗り具合は、このときの筆への塗料の残し具合によります。
 多段階のドライブラシを行う際は、筆に残す塗料の量と筆圧の調整により、徐々に色が乗る面積が少なくなっていくようにします。

ドライブラシ前  ドライブラシ前の画像。
 キャタピラや機銃など金属が剥き出しの部分は、ドライブラシによる金属光沢表現の下地として黒を塗装してあります。
 金属光沢は金属色を塗らずに、黒の上にダークグレー、ニュートラルグレーとドライブラシを重ねていった方が絵画的な美しい質感を得られます。

ドライブラシ後  ドライブラシ後の画像。
 ドライブラシを失敗しにくくするには、模型に塗る前に余剰パーツやランナーを用いて試験してみるのが良いでしょう。

ぼかし塗装としてのドライブラシ

ドライブラシ後  ドライブラシは塗装面に乗せた色を筆で引き伸ばしたり、油絵の具のような乾燥の遅い塗料であれば引き伸ばしつつ混ぜ合わせ(ブレンディング)ることでぼかし塗装に用いることもできます。
 こうしたぼかし塗装としてのドライブラシは、退色表現や化粧表現などに見られるグラデーション表現に利用されます。
 ただ、こういったぼかし塗装としてのドライブラシはパステルワークで代用可能で、粉末パステルを用いた方がより容易です。
 画像は(かなりオーバーな表現ですが)茶漉しでこすることで粉末化したグレーのパステルで砲塔上面に退色表現を行った際の様子。
 このように筆でもグラデーション表現は可能です。
 黒パステルを用いればシャドー表現も可能ですし、鉛筆芯を用いれば金属の黒光り表現も可能です。

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