今回はエアブラシでの塗装技法の一つを紹介します。
暗い色の上にエッジやパネルラインを吹き残しながら明るい色を塗装することで、陰影感を演出する技法です。
ある意味、シャドウ吹きの対極にある技法です。
実際の光源と陰の関係を考えれば、シャドウ吹きにしてもこの技法にしても嘘だらけの演出なのですが、情報量が増えることにより「うまく見える」塗装技法です。
技法としては簡単で、目的の色より暗い色を最初に塗り、その後目的の色をエッジやパネルラインを吹き残しながら塗装するだけです。ただかなりの細吹きができるエアブラシが必要なので、道具に依存する技法です(私はタミヤのスプレーワークHGを使用)。
暗い色の選択ですが、目的の色がダークイエローならマホガニー、ジャーマングレイならブラックといった感じです。
今回使用するのはバンダイのザク。組立はほぼ素組みで、簡単に後組み加工をしただけです。
基本塗装に使用した塗料はタミヤとグンゼの水溶性アクリルカラー。色はフラットブラック、ジャーマングレイ、ミディアムブルー、ニュートラルグレイ、ミッドナイトブルー、後は10年前(!)に調合したザクイエローグリーンとザクグリーンです。
モノアイはシルバーで塗装後にクリアレッドで塗装。
水溶性アクリルカラーはエアブラシをバケツにためた水で「うがい」できるため、エアブラシの清掃が楽です。塗膜の強度と乾燥速度ではラッカー系アクリル塗料に劣りますが、使い勝手は上です。
塗装自体は最初はクリア(つやあり)系で塗装し、後にフラットクリアを塗装した方が発色も良く墨入れも綺麗にできる(つや消しは表面がざらざらなため墨が流れやすく残りやすいため)のですが、今回使用したのは全てフラット(つや消し)系です。乾燥が早くなるからです。
まずフラットブラックで塗装します。対象は黒いパーツの他、装甲の裏、機体内部等です。
肘、膝、足といった黒いパーツにエッジやパネルラインを吹き残すようにミッドナイトブルーを塗装。写真ではほとんどわからないですね。
残りのパーツはジャーマングレイで塗装。関節、バックパック、指といった灰色のパーツはエッジやパネルラインを吹き残すように塗装しています。
こういう風に目的の色をエッジやパネルラインを吹き残すように塗装していきます。エアブラシを細吹きにして丁寧に作業します。
そして完成。今回はマスキングを行っていません。手首等塗り分けの必要なパーツはエアブラシの吹きつけ角を利用して塗り分けています。
墨入れにはフラットブラックを使用。原理的には各色の陰色を使うのがベストですが、ベース色にジャーマングレイを使用したこともあり、問題なしと判断。手を抜いてます。(手を抜くときは「見えない」ように。自分自身のために。)
バックパックカバーはジャーマングレイの上にミディアムブルー。
マゼラトップ主砲。これはジャーマングレイの上にニュートラルグレイ。
まずは塗装の剥げを表現してみます。
使い古しの筆に濃い目の塗料を含ませ、紙でよく拭ってからエッジなどを筆の腹で擦ります。
シャープにエッジに色をのせたい場合は、紙にほとんど色がうつらなくなるまで拭うとよいでしょう。
今回使用した色はタミヤアクリルのクロームシルバー。こういう塗膜の剥げですが、銀色は使わずグレーで表現する場合もあります。
アクリル塗料の上にアクリル塗料ですので、一発勝負です。パステルを使う際にエナメルシンナーを使用するのでやむを得ない選択です。
次にパステルを使用して泥の付着を表現してみます。
写真はヌーベルの製品で、画材店で入手できます。
まずパステルを粉末にします。
写真左は100円ショップで購入した茶漉しですって粉末にしたもの。写真右は紙やすりで粉末にしたものです。
紙やすりの方がきめが細かい粉末ができますが、実用上ほとんど問題がないので、茶漉しでする方がお勧めです。
エナメルシンナーを含ませた筆に粉末にしたパステルを含ませて、模型の表面に擦り付けます。
要領はドライブラシに近いです。
エナメルシンナーはパステルを筆に効率よく含ませるために使用しているだけで、パステルを模型表面に定着させているわけではありません。
パステルを模型表面に定着するためにはつや消しクリアーなどトップコートを吹きつける必要があります。
今回紹介したのは汚し塗装の技法のほんの一部です。
凹部に溜まった泥、雨に流されて滲んだ錆、オイル滴れ等、表現する対象にあわせて様々な技法がありますが、それらについてはまた機会を設けて紹介したいと思います。